Caravan - Live at the Fairfield Halls 1974

Live at the Fairfield Halls  アナログ時代の産物がCD時代になってリマスターどころか再編集して仕切り直しでリリースされるということはボチボチとあることだが、Caravanの「Live at the Fairfield Halls 1974 」という作品についての逸話は割と面白いものでどことなく印象に残っている。もちろんCaravanというバンドのことは個人的にかなり好きなバンドの上位に入るくせにアルバムやメンバーの詳細まで深入りしていないといういい加減な好きさなのだ。何でだろ?もっと詳しくハマり込んで良いハズなんだけど、音を聴いているとそういう事柄よりも音そのものに心地良くなってしまうからどっちでも良くなっちゃうんだろうなぁ…などと勝手な解釈。

 そもそも1980年頃になってフランスから編集盤として「The Best of Caravan (Live)」ってのが2枚組でリリースされていて、それが実はライブ盤なんだというのはもちろんどんどん広まっていった話なので、ちょっとCaravanの収集を心掛けた人なら真っ先に探すであろうアルバムとして挙げられていたものだ。自分の時はもうとにかくCaravanのアルバム捜し自体が結構大変だったんだが…。90年代半ばにCaravanが復活して盛んに活動し始めた頃、多分日本に来た時なのかな、それとも日本のインタビュアーに訊かれた時なのか…、この「The Best of Caravan Live」のCDでの再リリースについて訊いてみたトコロ、それは何の話だ?ってことになって、その存在そのものがメンバーも承諾していなかったということがわかったのだった。どうも詳しく聴かれてあれやこれやとなったらしいが、結局その後にビジネス的に探して追い詰めたんだろうなぁ…。そのおかげで突然ながら2002年になって待望の「Live at the Fairfield Halls 1974 」というCDとしてこの時のライブが曲順も新たに、もちろん音もリマスターされて発掘ライブ的にリリースされたのだった。

 そんな経緯があったアルバムなので、メンバー的にも本位じゃなかったにしろ、きちんとした形でリリースする価値があると判断したのは賢明だし、他にマテリアルがそれほど残っているものでもないだろうし、何よりも絶頂期とも云える1974年の「For Girls Who Grow Plump in Night」の傑作ツアーの模様なんだから悪いはずがない。そんな素晴らしい音だったからこそこうして世に再度出てきたのだろう。そんなライブはベーシストが交代したばかりという時期であるものの、演奏を聴いていると基本的にスタジオ盤の再演でしかないのだが、緊張感と白熱度が素晴らしくて一気に聞き入ってしまうテンションの高さを持っている。ヴァイオリンや管楽器なども入って全く素晴らしいライブが収録されている。このバンドアンサンブルの高さは楽曲の良さと共に独特のセンスで迫ってくる面白さがあるね。カンタベリーとかいう括りじゃなくていわゆるライブアルバムとして相当ハイレベルにあるし、きちんと当時からリリースされていたら名盤扱いされていたに違いない。Caravanのライブといえば「Live at the Fairfield Halls 1974 」が筆頭に挙がるだろうが、もちろん「Caravan & The New Symphonia」もいつか取り上げたいけど、オーケストラがない分バンドの真髄が発揮出来ている「Live at the Fairfield Halls 1974 」の方に軍配が挙がる。

 カンタベリーの世界ってホント不思議。独特のポップセンスとジャズセンスをロックで融合させて軽やかに演奏するというのか…、誰にでも出来るわけじゃないだろうけど触れてみたい音楽。好きだねぇ、ホントにCaravanの音は。だからこの「Live at the Fairfield Halls 1974 」も期待して何度も何度も聴いた作品だもん。フワフワした感覚でいつも聴いてるし、心地良さが良いね。

Caravan - For Girls Who Grow Plump In The Night

For Girls Who Grow Plump in the Night  凄くブリティッシュなギターの入ったロックが聴きたくなったので、がらりと変わってキャラバンを引っ張り出す。プログレの中でも更に一ジャンルを築き上げているカンタベリー派の代表バンドで、これはイギリスでしかあり得ないっていう旋律や雰囲気が好きで結構よく聴く。一般的な作品としての評価では「グレイとピンクの地」が最高傑作として挙げられることが多くって、もちろんアルバムとしてのトータル性や音楽面でもすごく統一感があるっつうか、一気に聴けてしまうくらい完成された音楽なんだけど、個人的によく聴くのはギタリスト的聴覚も手伝うためか、その後の「夜ごとに太る女のために」っつう何とも人を食ったタイトルの付けられたアルバム。これがねぇ、凄いギターアルバムなんだって。いや、凄いソロがあるとか弾きまくってるってワケじゃないんだけど、でも全編に渡って軽いながらも歪んだギターのリフが曲を引っ張っているし、それに乗っかるメロディーやサウンドそのものは実に軽快で、一見どう聴いても単なるポップスにしか聞こえないくらい美しいんだな。

 まぁ、紐解くとそれまでのキャラバンってリチャード・シンクレアが主導を握っていて、だからこそプログレッシブな音楽だったんだけど、彼が脱退してしまったんだな。他にもメンバーが変わってるんで新生キャラバンの一作目っていうアルバムなわけだ。で、その音楽的主導を握っていたのがギターのパイ・ヘイスティングだったのでこんなギターらしいアルバムが作られたワケ。個人的には大正解のメンバーチェンジなんだけど、コアなファンにはどう映ったんでしょう?プログレの人って似たようなバンドをアチコチと移動するってのがよくあることみたいに感じているので、ある意味ジャズと同じでリーダーが誰かによって作風が変わる、みたいな部分あるって思ってるからなぁ。特にカンタベリー系の場合はそれが顕著な気がしていて、90年代にはキャラバンとキャメルが合体したミラージュってバンドを作っていたり、ソフトマシーンだって二枚と同じメンバーでアルバム出したことないし、その辺行くとハットフィールドからナショナル・ヘルスギルガメッシュとかソフトヒープ…、果てはディス・ヒートまで行くワケで、ワイルド・フラワーズから始まったカンタベリーの長い長い道は実に楽しく深い森ですな。ここを制するとブリティッシュロックが凄く面白くなるのは間違いないね。

 んで、話を戻すと、このキャラバン5枚目のアルバムではA面トップを飾る「Memory Lain, Hugh / Headloss」の軽快なギターリフから始まるサウンドが実に心地良い。ライブでも定番曲になっていたはずだし…。続く「Hoedown」もカッティングを交えた軽快なリフが中心のポップな楽曲だし、「Suprise Suprise」はもう永遠の名曲だよね。この軽快さは一体何がそうしているんだろう?素晴らしい。そういえば一昨年くらいからこの辺の伝説のプログレ連中がこぞって来日公演を果たしていて、マニアを泣かせているようだ。キャラバンは見たいなと思ってたけど、残念ながら行けなかった。う〜ん、しかも最近のライブのDVDまで出してるんだよね。まぁ、テクニックがなくなってるわけじゃないので、いつのライブを見てもいいんだろうけど、やっぱり70年代に夢を描くよね。そしてこのアルバムのB面(アナログ時代の言い方か…)の組曲、「L'auberge Du Sanglier」が圧巻の出来映えで一気に聞き込める素晴らしさ。途中ソフトマシーンからの流用と思われるフレーズも使われているんだけど、この辺もカンタベリー音楽の面白いところ。

 このメンツで奏でられたライブ音源がアナログ時代にはなぜか「The Best Of Caravan」としてリリースされていたんだけど、実はキャラバンのメンバーも知らなかったようなので見事な海賊盤?なのかな。んで、それを知ったメンバーがその出来の良さに感動してかどうか知らないけどめでたくCDで「Live at the Fairfield Halls, 1974」としてリリースされたんだけど、これがまた良い!

Caravan - Waterloo Lily

Waterloo Lily  ソフト・マシーンと同じバンドをルートに持つCaravanも1972年には既に多様の変化をし始めていた頃で、こちらはキーパーソンでもあったデイヴ・シンクレアが脱退してしまうという事態に陥っていた頃だったのだが、カンタベリーバンドの常なのか、それでも大きなサウンド変化にはならないというか相変わらずカンタベリーらしい音を出したままと言うか、全くガラリと変わった面もあるのだが、バンドの歴史としては良い方向に変化していったというユニークな展開。それこそがCaravanの面白いところで、やっぱりこのポップさは侮れない。

 「Waterloo Lily」1972年リリースの4作目、前作「グレイとピンクの地」が初期の傑作として名高く、そしてこの後にリリースされる「夜ごと太る女のために」がかなりの傑作だったためどこか埋もれがちなアルバムではある。まぁ、ジャケットからして少々地味なのは確かだが、サウンド的にはそんなこともないんだよね。もちろんデヴィッド・シンクレアのいなくなった穴をスティーヴ・ミラーが埋められたとは思えないんだけど、しっかりと埋められているところもあって、悪くないしさ。一応Caravanのアルバムの中では最もジャズ寄りのサウンドと言われているんだけど、それはスティーヴ・ミラーの特性のおかげではある。が、さすがにソフト・マシーンを聴いた後では全然そういう雰囲気を感じるものでもなくってもっと音楽的に昇華させるための鍵盤楽器の美しさを引き出しているというような感じで、一方まだパイ・ヘイスティングが全開とまではギターを弾き切っていない面がこの後を知っているともどかしいかな。しかし前作に比べると楽器の演奏レベルがグンと上がっているように感じるのは気のせいかな、二曲目の「Nothing At All」っつう曲ではあのロル・コックスヒルとフィル・ミラーがゲストで参加しているのでそのせいかもしれないけど(笑)。パイ・ヘイスティングの相変わらず美しい「Song By Signs」なんてのはモロにCaravanって感じの小曲で、あぁやっぱりカンタベリーっていいなぁって思う瞬間。

 なんだかんだでやっぱりこのアルバムも名作だと思うよなぁ。ポップなメロディの曲はないけど音的にはしっかりとCaravanの世界だし、デヴィッド・シンクレアが不在というのも相対的には大きな問題になってない、と思う。いたらいたで違うんだけど自分的には許せるなぁ、この世界をきちんと出してくれるんだったらね。そう思えるアルバム。

 ちなみに中ジャケはとんでもなく強烈なお姉ちゃんの絵なのが表ジャケットとギャップがあって面白い。こういうユーモアセンスも喜ばしいな(笑)。

Caravan - Cunning Stunts

 ソフト・マシーンと同じ根幹を持つキャラバン、両者とも元々はワイルド・フラワーズというバンドから派生して進化したバンドなのだが70年代に入ってからは全く異なる音楽を奏でるバンドに進化していったというのも面白いところ。カンタベリーサウンドと云う広義の捉え方では両者ともしっかりカンタベリーサウンドを聴かせてくれるんだけど、表現が全く違っていてソフト・マシーンの進化具合は恐ろしいまでの変化でもあり、一方のキャラバンも別の意味で変化に富んだ過程を辿っている。そんなキャラバンの中でも最高傑作と名高い邦題「ロッキン・コンチェルト」にスポットを当ててみた。

 うん、はっきり云って滅茶苦茶ポップ。だから聴きやすいハズ。しかし、しかし、だ。18分にも及ぶ組曲「The Dubsong Conshirtoe」で表されるキャラバンの新世界を聴けばよくわかるが、ポップなメロディとハードなギターサウンドや鍵盤で表されるサウンドから展開されるアドリブパートは見事に英国的ジャズフレーズに変わっていくという面白さ。この辺だけを切り離して聴くとソフトマシーンとの差もそれほどないのかなぁという気もするが、それも一瞬の話なのでやっぱり独自サウンドを築き上げた名盤♪

 単に長いだけの曲ではなくっていくつかのメロディやリフによって構成されている組曲なので何度聴いても面白くって楽しめる。コンガみたいなもんまで入ってくるっつうのもなかなか凄いよな(笑)。そして最後は狂気を演出するかのような盛り上がりに歌メロの中で印象に残るメロディーが刻まれて終演を迎えるのだが、これがまた荘厳という言葉が当てはまるのだ。うん、キャラバン史上最高の曲のひとつだろうなぁ。その余韻を和ませるのが次曲「The Fear And...」というカントリータッチのアコースティックギターで始まる牧歌的なサウンドなのだが、これがまたこの位置にしか置けないくらいにぴったりとした軽快な曲で素晴らしい余韻。

 話は逆になってしまったがA面の世界ももちろん名曲のオンパレードで決してハードにとかシンフォニックにとか云う展開でもないけれど、ピアノやベースというスタンダードな音から美しくそしてキャッチーに迫ってくる「The Show Of Our Live」から始まり、大好きな二曲目、パイ・ヘイスティングの絶妙なギターから始まる「Stuck In A Hole」。ギターリフも軽快でかっちょいいし、歌メロもキャッチーで凄く良いのだ♪

 でも、しっかりプログレっつうのはなんでだろ?楽器の使い方の問題だろうな(笑)。そして名バラード「Lover」。まるでジョン・レノンを聴いているかのような曲作りでしっとりと聴かせてくれるんだけど、まぁ、好みで云えばちょっと違う(笑)でも、曲は凄く良いよ。そして実に英国的なメロディでこれもどこかしっとりとした「No Backstage Pass」…、こういう曲が歌メロ付きで迫ってくるからこのアルバムは売れたんだろうな。んで、まったく異色な「Welcome The Day」…、アメリカでもウケた理由ってのはこういう曲のおかげだと思うけど、線の細さが英国的って感じかな。あぁ、ちょっとブラコン的な音だからさ。

 そ〜んな感じでこのアルバム、前作「夜ごとに太る女たちのために」に続いてリリースされているんだけど、こっちの方が売れたようで、人気あるみたいだね。ジャケットもヒプノシスの透明人間…でもカガミを見れば?みたいな感じでユニーク。アルバム的にはライターが分散しているからまとまりっていう感じはないけどその分楽曲レベルの高い曲ばかりが収録されているので結果としては名作に仕上がってるね。あ〜、やっぱ気持ち良い作品は気持ち良い♪

 この辺のBBCライブ盤もいくつか出ていて「Ether Way: BBC Sessions 1975-77」っつうのだと丁度大曲「The Dubsong Conshirtoe」のライブが聴ける♪

Delivery - Fools Meeting

Fools Meeting カンタベリーの重鎮となった面々…、Phil Miller、Steve Miller、Pip Pyle、Lol Coxhill、Richard Sinclairなどなどですら最初にシーンに出てきた時にはやっぱり初々しい(笑)。最初からカンタベリーのあの世界観をわかっていてやってたワケじゃないだろうから余計にそうなんだけど、この時期であれば既にソフツは割とジャズ〜な世界だし、キャラバンは独自の進化を遂げている頃か…、それでも1970年という時代はまだまだ早熟な時代だったのだ。だから故に全く何でもありの音楽が全て脚光を一瞬だけでも浴びて世に出てこれたし、逆に言えばこの時代じゃなければ世に出てこれなかった人は多かったのではないかと。

 1970年にリリースされたDeliveryというバンドのアルバム「Fools Meeting」ですが…、上記面々がバックを務めていて、歌はちょっと前にこのブログでも登場した後にUncle Dogというバンドでも歌を歌うこととなる英国のジャニス・ジョプリンと呼ばれたキャロル・グライムズなのですな。なのでカンタベリーシーンとポール・コゾフが繋がってしまって…そうするともう何でも繋がっていくという英国ロックファミリートゥリーの世界(笑)。いやいや…、それはともかくですね、このDeliveryというバンドは面白いです。カンタベリーの独特の雰囲気があそこまで打ち出される以前のジャズチックな淡々とクールな演奏にキャロル・グライムズの熱いブルースな歌が被ってくるので、圧倒的にキャロル・グライムズの歌にバックが引き込まれている。だからDeliveryというバンドをカンタベリーのルーツから紹介された時にはかなり異質なバンドとして映る。フィル・ミラーもリチャード・シンクレアもピプ・パイルもいるのに、だ。両方の世界を知った上でこのDeliveryと言うバンドを聴くと非常〜に面白い。それはもちろん間奏などになるとちょっとピプ・パイルのギターがロック寄り過ぎるキライはあるけど、後のカンタベリーサウンドと呼ばれる音の未熟な姿が聴けるから。そこをキャロル・グライムズは独自の感性で歌を入れているからね。

 ロックの世界で融合というのは当たり前のように行われているけど、分離という姿はあまり多くないので、Deliveryのサウンドについて言えば分離という姿を実現したバンドかもしれない。キャロル・グライムズはブルースからスワンプの世界へと歌声を自慢に歩んでいったし、バックはそのままカンタベリーサウンドへ邁進。ブルースとカンタベリーが同居した唯一のアルバムがこの「Fools Meeting」なのかもしれないね。そしてそれは明暗くっきりと聴いている側にも分かってしまうくらいのアンバランスさだった(笑)。いや、だからこそ面白かったんだと思う。他にないサウンドだし。そんなユニークな試みは知ってて行われたのか、偶然の産物か…、いずれにしてもどちらの個性も殺すことなく見事に同居していた軌跡のアルバム「Fools Meeting」です。