Hatfield & The North - Hatfield & The North

Hatfield and the North  意識的に流れからカンタベリーは避けていたんだけど、やっぱり絡んでしまうよねぇ…。デイブ・スチュワートの軌跡ってワケじゃないけど、やはり一歩前に遡ってカンタベリー史上の名バンドとも呼ばれるHatfield and the Northのセカンド名盤「The Rotters' Club」を…と思ったが前に書いてしまっているので、今回は実はかなり名盤の域に入るファースト「Hatfield and the North」です。

 1974年発表の全くカンタベリーとはこういう世界なのか、と言った世界観を出した作品でもあるし、時代的にもクロスオーヴァーなサウンドを編み出し始めた頃とも言え、その実アメリカでフュージョン系が出てくるよりも早く同じアプローチを試みているとは言い過ぎかね。まぁ、比較対象が異なるからそういう見方もしなくてさ、英国カンタベリー路線から聴いていくと至極当たり前の世界に到達しているという気もする。

 えっと…音的には英国クールジャズとロックの変拍子と淡々とした姿、更に優しい歌声だったり知性を圧倒的に感じる音世界。面白いのはそれでもバンドの基本構成は一般と同じくギター、ドラム、ベース、鍵盤、歌、なんだよね。だからロックバンドなんだが…、不思議だ。もっともゲスト陣に…ファーストアルバムでゲスト陣ってファミリーじゃなきゃできないっていうのもあるが(笑)、サックスやフルートの管楽器系、それと実は非常〜に話題とならなければいけないのがロバート・ワイアットの事故復帰後最初のボーカル参加作品…これがまた優しく奏でる美しい世界へ誘ってくれるのでもう夢見心地の空間に一気に突入。全てを忘れて没頭できる瞑想の世界だもんなぁ…。

 うん、なんかこのまま聴いているとカンタベリーの世界をウロウロしそうだな…、そんな魅力がある世界だし、秋ってのもそれを冗長する…、いいよ、この幻想的な世界観。アルバムジャケットも地味だけどよく見ると英国の霧と鬱をよく表しているでしょ。現実逃避できる素晴らしい音に安らぎを求めるには最高のアルバム。ちなみに初心者でも全然聴きやすいポップさと軽さもしっかりと持ち合わせているので問題なし。また近いうちにこの世界には戻ってこよ

Hatfield & The North - The Rotter's Club

The Rotters' Club  先にEggというバンドを書いておかなければいけなかったのかな。でも、まあ気分的に盛り上がったのでやっぱりカンタベリーロック随一の名盤と呼ばれるHatfield & The Northの「The Rotters' Club」を聴きたくなってしまったのでいいでしょ(笑)。いや、何故かっつうとですね、このバンドの構成がこないだ書いたマッチング・モールから抜擢されたギターのフィル・ミラーと昨日書いたゴングのドラマー、ピップ・パイル、ちょっと前に書いたキャラバンのリチャード・シンクレアがベースと歌、Eggから参加したデイヴィ・ステュワートが鍵盤なワケですよ。

ま、その辺はスティーブ・ミラーだったりデイヴ・シンクレアだったりしたみたいだけどね。要するにカンタベリーロックシーンってこういう人達が自然と交流していていつの間にかバンドが出来上がってるみたいな感じなんだよね。で、やってる音楽が凄い。絶対的に完成度の高い全てを含んだ音楽と云えるのかな。あ、ブルースだけはないけどね。こないだまで散々ブルースを書いていてこんなにブルースの全くないサウンドにハマってるってのも面白い自分の趣味なんだけど(笑)。

 ファーストアルバムは1974年にリリースされていて、同じようにカンタベリーそのものって感じなんだけど、ちょっと混沌としてる印象。でも、事故で半身不随となってしまったロバート・ワイアットの復帰曲も収録しているので、こういうところがカンタベリー人脈でしょ。やっぱ、いいんですよね、これも。そして翌年にこの「The Rotters' Club」をリリースするんだけど、もうねぇ、ジャジー、サイケ、変拍子、プログレ、ポップ、アバンギャルド、ユーモア、浮遊感、切なさ、ドラマティックっていう音楽の要素を全て揃えていて、もちろん演奏も上手いし、歌も上手い。だから聴きやすい。そういえば、バックコーラスにはあのバーバラ・ガスキン嬢も参加しているんだよね。まぁ、デイヴ・ステュワートがいるんだからおかしくないけど(スチュワート&ガスキンっていうユニットも透明感あってイギリス的でなかなかオススメなんです)。

 それにしてもこういう音楽ってのはどうやって作って演奏するんだろ?やっぱ楽譜書くんだろうか?ロック畑にいると楽譜を見て、なんてのはあんまり多くないと思うんだけど、これくらい完成度の高いサウンドになるとやっぱ音楽家の演奏だから楽譜なんだろうなぁ。でも途中のどう考えてもアドリブっつうパートなんてのは楽譜表現じゃないだろうし、って思うワケですよ。もちろんバンドという単位の話なのでできてておかしくないし、実際聴けるんだからさ。感性が近い人達がこんなにいっぱいいるってのがカンタベリーの地方性なんだろうか。まあ、いずれにしても言葉では絶対に表現できない落ち着いた大人の、そしてイギリスでしかあり得ないまろやかでエッジの立ったサウンドはプログレというジャンルを大きくはみ出ている素晴らしいアルバム。ちなみにアメリカ盤ではボーナストラック付きで出てるのでお得♪。

National Health - National Health

ナショナル・ヘルス(紙)  ナショナル・ヘルスの1978年リリースのファーストアルバム「ナショナル・ヘルス」だ。もちろんハットフィールド&ザ・ノースからの流れというものを知らないといけないのだが…、いや、結局カンタベリーシーンの連中ってのはメンバーがほとんど一緒でもバンド名をコロコロ変えているっていうのもあって、名前にこだわらないんだよ。こだわっていても今度は中身がまるで変わっているとか、とにかく友人同士でジャズのリーダー作のような感覚でアルバムを作っていたりセッションしていたりするので個人名で追いかけていかないとワケわかんなくなるのもユニークな集合体。

 まぁ、お馴染みのデイヴ・スチュワートとフィル・ミラーを中心にピプ・パイルのドラムと何とニール・マーレイがベースを弾いているのだ。そう、あのホワイトスネイクに参加していたニール・マーレイです。意外なところからシーンに参加してたんだなぁ。だからホワイトスネイクもカンタベリー一派なのだ(笑)。ま、そんな冗談はともかく、ロック界でも傑出した作品のひとつでもある本作「ナショナル・ヘルス」なのだが、まぁ、誰にでもお薦めというような代物ではない。ただ、このレベルのアルバムってなかなか見つからないぜ〜っていうくらいに素晴らしい作品なので、実感してもらいたいな、とは思うけど。

 大曲ばかり収録した全5曲の作品でもちろんほとんど歌無し。歌があってもそれは美しいコーラス=アマンダ・パーソンズという女性によるもので、最初の「Tenemos Roads」という曲では大活躍するが、その程度のモノだ。何と言っても強烈なのはやっぱりデイヴ・スチュワートとフィル・ミラーの鍵盤とギターによる主旋律と彩り。そこにピプ・パイルの軽やかなドラミング…、後にブラッフォードも参加することになるのだが、かなり近いタイプのドラミングで面白い。そしてゲスト陣にはジミー・ヘイスティングやアラン・ゴウエンなどが参加しているというもので、カンタベリー主力が結集しているアルバムでもあるので悪いはずがない。ただし、普通にプログレやロックを期待してはいけない(笑)。やっぱりカンタベリーの香りを楽しめる人にしか楽しめない作品だろうから。ジャケットの賑やかさもカンタベリーらしくて頼もしい。

National Health - Missing Peaces

Missing Pieces  ビル・ブラッフォードのドラマーとしてのイメージは恐らく大多数がイエスなのだろうし、キング・クリムゾンなのだろうと思う。それ以外となるとそんなにパッとは思い付かないとか、せいぜいブラッフォードのソロ作程度で…なんて感じか。その実ジェネシスにも参加していたりするので、メジャープログレバンドを見事に渡り歩いているというモテモテのドラマーなのだった。そんなブラッフォードがどういうワケなのかカンタベリーシーンの一端を担うことになったのが、デイヴ・スチュワートの勧誘。キング・クリムゾンの活動に終止符を打ったところに声掛けされ、丁度その頃にカンタベリーシーンの名バンドのHatfield and The NorthとGilgameshというバンドが融合したプロジェクトが発足したので参加するという次第…。そういえばブラッフォードってこの後ゴングにも参加してなかったっけ?

 ってなことで、珍しく発掘音源再発モノを取り上げてみました。1996年に発掘リリースされたNational Healthのタイトル通り「Missing Pieces」という作品。National Health自体は1975年にカンタベリーミュージシャン大集合という感じでセッションを重ねていたみたいで、しっかりと録音されていたのがこの作品に纏められているというもの。アルバムリリース時にはシンプルな4人編成ってなっちゃったんだけど、その前はもうとんでもないメンツが揃ってたんですよ。まぁ、アルバムリリース時も結局常に多数ゲストで似たようなことしてたんだけどさ。Dave StewartはもちろんSteve Hillage、Phil Miller、Alan GowenにMont Cambell(!)、Pip PyleにもちろんBruford、更にはNeil Murray…、ホワイトスネイクです、はい。更にBarbara GaskinとAmanda Personsというような面々、John Greavesもです。まぁ、誰がどのバンドの人なのかってのは大して問題でもなくって、この辺はメンツの名前で動いている有機体みたいなもんなので…、うん、ジャズミュージシャンと一緒なんだよね、活動自体も。だからバンド名はたまたま、に近い(笑)。

 さて、それはともかく、この未発表発掘音源集「Missing Pieces」はそれぞれのミュージシャン単位でのセッションがリハーサルレベルではなくって本気のセッションモードで録音されているので、全くオリジナルアルバムとも言えるレベルの作品集になってます。なので、かなりとんでもなく浸れるところが普通の未発表作品集とは異なりますよ。聴いているとBrufordかな、これ?とかやっぱAlan Gowenも特徴的なピアノだ…とかNeil Murrayのベースって凄く自己主張してるじゃないか、とかわかります。そしてやっぱり目立つのはMont Cambellの作曲能力の高さとセンス、かな。軽やかなる変態、というべきでして、とんでもなくクラシックとジャズが一緒に同居しているし、更にポップさも入ってるから恐ろしい。そしてDave Stewartの独特の感性…、後にGaskin Stewartの布石とも言える「Clocks and Cloud」はAmanda Parsonsのキッチュな歌声で浮遊感を聴けるってなもんだ。とんでもなく美しく楽しい歌。

 そんなセッションが大量に、そしてハイレベルハイセンスなミュージシャンのぶつかり合いではなくて譲り合うセッション大会が英国的に聴ける楽しみ。難解にも聞こえるけど、心地良いと思うと非常に心地良い…ね。

Delivery - Fools Meeting

Fools Meeting カンタベリーの重鎮となった面々…、Phil Miller、Steve Miller、Pip Pyle、Lol Coxhill、Richard Sinclairなどなどですら最初にシーンに出てきた時にはやっぱり初々しい(笑)。最初からカンタベリーのあの世界観をわかっていてやってたワケじゃないだろうから余計にそうなんだけど、この時期であれば既にソフツは割とジャズ〜な世界だし、キャラバンは独自の進化を遂げている頃か…、それでも1970年という時代はまだまだ早熟な時代だったのだ。だから故に全く何でもありの音楽が全て脚光を一瞬だけでも浴びて世に出てこれたし、逆に言えばこの時代じゃなければ世に出てこれなかった人は多かったのではないかと。

 1970年にリリースされたDeliveryというバンドのアルバム「Fools Meeting」ですが…、上記面々がバックを務めていて、歌はちょっと前にこのブログでも登場した後にUncle Dogというバンドでも歌を歌うこととなる英国のジャニス・ジョプリンと呼ばれたキャロル・グライムズなのですな。なのでカンタベリーシーンとポール・コゾフが繋がってしまって…そうするともう何でも繋がっていくという英国ロックファミリートゥリーの世界(笑)。いやいや…、それはともかくですね、このDeliveryというバンドは面白いです。カンタベリーの独特の雰囲気があそこまで打ち出される以前のジャズチックな淡々とクールな演奏にキャロル・グライムズの熱いブルースな歌が被ってくるので、圧倒的にキャロル・グライムズの歌にバックが引き込まれている。だからDeliveryというバンドをカンタベリーのルーツから紹介された時にはかなり異質なバンドとして映る。フィル・ミラーもリチャード・シンクレアもピプ・パイルもいるのに、だ。両方の世界を知った上でこのDeliveryと言うバンドを聴くと非常〜に面白い。それはもちろん間奏などになるとちょっとピプ・パイルのギターがロック寄り過ぎるキライはあるけど、後のカンタベリーサウンドと呼ばれる音の未熟な姿が聴けるから。そこをキャロル・グライムズは独自の感性で歌を入れているからね。

 ロックの世界で融合というのは当たり前のように行われているけど、分離という姿はあまり多くないので、Deliveryのサウンドについて言えば分離という姿を実現したバンドかもしれない。キャロル・グライムズはブルースからスワンプの世界へと歌声を自慢に歩んでいったし、バックはそのままカンタベリーサウンドへ邁進。ブルースとカンタベリーが同居した唯一のアルバムがこの「Fools Meeting」なのかもしれないね。そしてそれは明暗くっきりと聴いている側にも分かってしまうくらいのアンバランスさだった(笑)。いや、だからこそ面白かったんだと思う。他にないサウンドだし。そんなユニークな試みは知ってて行われたのか、偶然の産物か…、いずれにしてもどちらの個性も殺すことなく見事に同居していた軌跡のアルバム「Fools Meeting」です。